2012年12月21日

30年前の贈り物

30年前の贈り物私より18歳先輩で、私が初めて勤めた会社の上司だったナマさんは、公私に渡ってベッタリ可愛がってくれた先輩です。

仕事が終わると一緒に風呂に行き、汗を流したアトは、酒屋が経営する小さな焼き鳥屋で毎日のようにオゴッてくれていました。

当時30代半ばだったナマさんにとって、いくらカワイイ後輩だと言っても毎日オゴル余裕はなかったはずなのに、そうしてくれていました。


30年前の贈り物他の先輩も寿司屋さんや蝶が舞い踊る繁華街に連れて行ってくれることもあり、ナマさんと行く風呂とは違う、自分で洗わなくていい風呂に連れて行ってくれることさえありました。

そのお風呂はサプライズでお土産をくれるのですが、おかげで1ヶ月近くも泌尿器科に通うことになってしまう経験もさせていただきました。

30年前の贈り物ナマさんは東北地方出身で、本人は標準語のように話しているつもりなのですが、ものすごくナマッていました。
カタコトの日本語で話すフィリピン人に恋をしてしまうように、ナマッているナマさんは父のようなアニキのような存在で、奥さんや幼稚園児くらいだったムスメさんとも仲良くしていただき、週末になると毎週のようにオウチにお邪魔しては、やっぱり呑んでいました。
会社の仲良しな先輩達と一緒に行った長野旅行では車屋ケンチャンがどうしてもできなかった野原での排便を、白樺並木の中でしてしまう自然派な一面も持っている人です。

30年前の贈り物ムスメのミホちゃんは私のことを田原俊彦だと思っていて、会えることをものすごく楽しみにしてくれていましたし、私も同じでした。
ナマさんは、私の友人たちも可愛がってくれていましたから、ヨーイチタッチャンたちにとっても良き先輩でした。

だからみんなも奥さんやミホちゃんのことを大事にしました。

クリスマスイヴ。

30年前の贈り物その夜はナマさんとは別行動で、ヨーイチやタッチャンたちと一緒でした。
私たちは会社の近くの橋の下に暮らしていたホームレスとも仲良しで、ホームレスにクリスマスプレゼントをすることを思いつき、家にあった呑みかけのウイスキーを持ってみんなでサンタになりました。
喜んでもらえたついでに、ちょっと足を伸ばして雪化粧をした富士山に向かいました。
ナマさんチに雪を降らせることを思いついてしまったのです。

30年前の贈り物タッチャンの車は荷物がたっぷり積める大きなワゴン車で、嫌がるタッチャンを押さえ込んで、人間が座る場所以外は全部雪を詰め込み、これじゃぁ足りないと、屋根の上にも雪を積み清水に戻ったのはすっかり深夜でした。
イイコトをするのに、できるだけ静かにナマさんチに横付けされたクルマから泥棒のように庭とクルマを往復し、夜明け前にはナマさんチの庭はすっかり雪景色になりました。

30年前の贈り物アトはこの時限爆弾が破裂するのを待つだけです。
しかし、1日経っても2日経っても音沙汰はなく、だからといってこちらから連絡して様子を探るほどアホでもなく、年を越してしまいました。
日の出とともに雪が溶けちゃったのかなぁとか、あんまりキモチ悪くて怖くなっちゃったのかなぁとか、サプライズの失敗を不安に思い出した頃、ナマさんから連絡がありました。

30年前の贈り物「はるぅ!あのな、クリスマスにウチだけ雪が降ったのよ。どっさり。でな、近所の人に聞いたりしたんだけど、わからないのよ、意味が。結局、近所の子ども達が喜んで集まって雪だるま作ったり、雪合戦したりしたんだけど、はるぅと何か関係あるのか?」

オレしかいないだろ!?そんなバカげたことやるヤツ!と思いつつ、「サンタっているんだぁ。。。」と、とぼけて30年。

30年前の贈り物私も環境が変わり、すっかりご無沙汰していたのですが、お仕事は続けていらっしゃるものの、ナマさんの体調があまりよくないとウワサを聞き、建て替えをしたというお宅を訪ねてみると、昔とちっとも変わらないナマさんに再会することができました。

もうすぐ70だよと治っていないナマリを利かし、ミホちゃんが我が母校のハンドボール部で活躍していたことは知っていましたが、その後結婚し、現在は同居してるんだと積もる話しを聞かせてくれました。

話の中にはクリスマスに自分チにだけ降った不思議な雪の話も出て、毎年その時期になると「なんだったんだろぉ?」と思い出しては家族でそのときの様子を話すのだそうです。


30年前の贈り物ミホちゃんはあいにく外出中で会えませんでしたが、小学生だというムスコくんが立派に接待してくれて、あの頃のミホちゃんがそうだったように、ナマさんとの宴を盛り上げてくれました。
ナマさんも私も若かった頃の話しは、懐かしいばかりでなく、こうやって呑めることが嬉しいと目を潤まして喜んでくれました。
すっかりなついたムスコくんが帰り際に離してくれず、また来る約束をしろと言うので、彼と同じ高さにしゃがみ、「絶対ナイショなんだけど、おじいちゃんはサンタクロースなんだよ。イイコにしてたらキミんチだけ雪が降るかもよ」と耳打ちをして帰ってきました。
30年前に仕掛けた時限爆弾は当時しっかりと爆発し、今も心の中で作動中です。 




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