2015年08月14日

26と753

26と753拝啓 お盆休みですか?
私はずっと仕事です。
できるだけ長い渋滞にハマったり、観光地でゲリラ豪雨にあったりして、私の気分を和ませてください。 敬具


先日、不思議な出会いがありました。

最近お邪魔させていただくようになった居酒屋さんから名刺のご注文をいただき、食事の時間にはちょっと早い18時半頃にお届けに行ってきました。
26と753
お盆休み前だからなのか、早い時間にもかかわらず、既にカウンターは3席ほどしか空いていませんでしたが、入口近くの隅の指定席に座り、旬の「とうがん」と、初物だと言う「さんまの刺身」をオーダーし、その間に生ビールで暑い一日に感謝していました。

あっという間に飲み干し、「オカワリッ!」と2杯目を注文すると、「ピッチ早いッスネ!」と店主のムスコさんが冷えたジョッキを片手にビールサーバーに向かいます。

26と753ココが砂漠でなかった事に感謝もして、ゴクゴクとありがたくノドを潤しますが、キッチリ1合の冷や酒で潔く寝床に就いた亡き祖父の「酒との関係」を尊敬し、いつかは自分もそんな呑み方ができるようになりたいと思いつつ、ゲリラ豪雨並みにバケツをひっくり返したように呑んでしまう意地汚い呑み方からはまだまだ卒業できそうにありません。
「フグヒレを酢みそで・・・」とツキダシが出る前に2杯目は空になり、汗で溺れそうになるほどの暑い一日にカラダが欲しているのは「水分」なのか、「アルコール」なのか、迷わず3杯目を発注します。

26と753この居酒屋さんは、JR草薙駅の目の前で、腕利きのお父さんと、ムスコさんの二人がカウンターの中で私達を楽しませてくれますが、今日までのお店の歴史をたどってみれば、その昔オンナ遊び病を患っていた頃に通っていたスナック風の居酒屋や、朝まで付き合ってくれた「プールバー」のオーナーなんかも関係者で、1年ほど前に草薙にオープンしたお世話になった先輩の娘さんが経営する「ガールズバー」もゴヒイキにしてくれている事がわかり、「他人のような気がしない」と言う理由で気に入ってノレンをくぐらせていただいております。
26と7533人連れのお客さんを断り、二人連れのお客さんにも「今夜はいっぱいで・・・」とお父さんがハゲたアタマを下げ下げ断る中、キャシャーンみたいな立体マスク姿で登場したチッチャなお婆さんが店内を見渡しながら「入れそォ・・・?」といかにも上品に入口を開けると、お父さんが私の隣の席に目をやり、私もそれに応えて「運命ですから・・・」と椅子を引いて「こんな席でよければ・・・」とカウンターに散らかった私のナワバリをコッチに寄せながら1人分の席を作ります。
彼女のお姿はこの店で何度か拝見していますが、隣に座った事はなく、もちろん話した事もありません。
「今日は忙しくて・・・」と、独り言なのか、私に話しかけているのかわからない一言から始まり、お見かけする限り間違いなく現役を引退されているお年頃にもかかわらず、「建設会社のオーナー?」「不動産関係?」と思えるようなお話に、耳を傾けますが、私も自身の素性を「通りすがりのチリメン問屋」以上に明かす事はなく、ましてや先様の素性をネホリハホリ聞く趣味もないので、独り言のような話しに「へぇ」「そぉですか・・・」と無責任な相づちを打つ事に終始いたします。
26と753「お話を聞いてくださっているのに、マスクのままは失礼よね・・・」とマスクをはずしながら「私は半身麻痺なのよ・・・」とカラダの右側半分がリハビリのおかげで辛うじて動いてくれる事を私に告げますが、お箸を使ったりグラスを持つ手にはそんな様子は見当たりません。
私が中学生だったか、高校生だったか、若い頃に父がやはり「顔面神経痛」を患い、入院していた事を話し、寝る時には閉じる事ができない目やクチにテープをはり、無表情の半分の顔が怖かった事を話すと、「私もソォなのよ」と無理矢理マバタキをする右目が涙ぐんでいるのを見せてくれます。
26と753話しの端端に伺える上品さは、聞きたくもないウワサ話しをベラベラとしゃべりまくるウチの近所のイチジクババァにも見習わせたいところですが、関わること自体マッピラゴメンなので、放っておきます。
いつしか私達の会話は成立し始め、気さくなお人柄も相まって「あなたのお住いは?」「ご家族は?」と、話しが弾み始めました。

私は話せる限りの話しで答えていると、「私の名前は・・・」と自分の名前は変わっているので読んで(呼んで)もらえた試しがないと言う話しになりました。

おもむろにさっきまで割り箸の入っていた袋を裏返すと、バッグの中からペンを取り出し、リハビリ中の右手でスラスラとフルネームを書きました。

【二六代】

26と753確かに読めません。
読めない私を察すると、すぐさま「ふ・む・よ」と振り仮名をふってくれます。
私はペンを借り、その横に「七五三夫」と書きました。
「父方の亡き祖父です。これも読めないでしょ?」とペンを置くと、「シメオさんね。じゃぁアナタはアキコさんの甥ッコさん?」と、まさかの急展開に。

さっきまで話していた「お名前」や「お住い」や「家族の事」などの「点」が線となり、一気に「面」になると、「アキコさんとは同級生なの。彼女はお元気?」と、懐かしい話しに火がつきます。

26と753「県東部に嫁いだアキコオバサンとは年に数回会ったり電話をさせていただりしていますが、ロスに暮らすアキコオバサンのムスメさんとは日常的にメールのやりとりをさせていただいたり、昨年日本に一時帰国した際には何十年ぶりかのデートをしました。そのムスメさんのムスメさんもアチラで結婚が決まったようで・・・」
・・・なんて同席しない登場人物の個人情報の限界を超え話す私に両目に涙を浮かべ、「本当に幸せな夜ね」とお喜びのご様子でした。

26と753彼女は「二六代」と書いた箸袋に「皇紀2600年生まれ」と書き足しました。
「皇紀2600年生まれ」が昭和何年なのかはわかりませんが、そんな書き方をする人が下品であるはずもなく、イキでコジャレた生き方をされている方なんだと察します。
そうなると無責任な「へぇ・・・」や「そぉなんですか・・・」は存在せず、古き農村地区だったこの街の、私と共有できる限界までさかのぼるに留まらず、私の知らないエピソードの数々にお互い帰る時間も忘れ、若い恋人並みに夢中になりました。

それでも「初老」の私と、ベテランの「老」の二六代さん。
名残惜しい時間に見切りをつけた帰り際、「アキコさんも私と同い年なんだから若い時とは違うでしょ?」と言いながら私の箸袋に手を伸ばし、ペンを走らせます。

「古希過ぎて 一病あるを よしとする 卒寿目指して日々晴れやかに」

26と753「急ぐとも 心静かに手を添えて 外にこぼすな 松茸の露」くらいしか思いつかない私には上等過ぎるメッセージに感激しますが、「アキコさんに会う機会があったら伝えてね」の命、しかと受け止めました。

「あなたとお友達になれてよかったわ。素敵な時間をありがとう」なんて言われれば「ホれてまうやろっ!」とか「今夜も夢で!」とか言い返す雰囲気は全くなく、再会を誓い、お互いの方向に右足から帰りました。


皇紀2600年 1940年 昭和15年・・・。

さっきオバサンに電話をしてみたところ、お留守のようでしたが、電話に出たオジサンの話しではアキコおばさんは昭和14年生まれらしい・・・。

早生まれ・・・?
「謎」は近々解決できる見通しです。
           



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Posted by Nori at 22:05│Comments(2)独り言
この記事へのコメント
26さんに昨日お会いしました。入口に近いカウンター席にいっらしゃいました。面識もないのでお声掛けは控えました。カツオの刺し身がお好きなようでした。機会があれば貴殿ともまたお話ししましょう。
Posted by あーちゃん at 2015年08月18日 07:09
あーちゃんさん、こんにちは。
北陸方面じゃないんですか?お土産が届かなかったので、まさか戻られているとは存じ上げませんでした。
ブログの登場人物が特定されてしまう書き方がいいのか、どうか。。。
以前、ハンバーグレストランのときもバレちゃいましたモンね。
勉強になります。
最近は、あーちゃんに連れて行ってもらった天ぷら屋さんにお世話になっています。お友達もできて、先日は紹介されたマルシェで遊んできました。
草薙のマルシェとはまた一味違った雰囲気で面白かったですよ。
そんな話をしながらまたお供させてください。
オサソイを首を長くしてお待ちしております。
Posted by NoriNori at 2015年08月19日 17:51
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