2013年01月26日
宝の言葉
むかしむかし、あるところ(東京都足立区)にエツコさんとヒロユキくんという、それはそれはたいそう仲のイイ兄妹がいました。
お父さんは福島出身で、お母さんは東京出身。
東北と関東のハーフとして東京に生まれ育ったエツコさんは中部地方のご主人との結婚を機に静岡に引越してきて、クウォーターとなる2人のご子息にも恵まれ、シアワセに暮らしていました。
それでもエツコさんには他人には言えない悩みがありました。
自分の名前があまり好きではないことです。
それは中学生時代にまでさかのぼります。
東北出身のお父さんはエツコさんのことを「エッチャン」と呼べず、「イッチャン」と言い、東京出身のお母さんはヒロユキくんのことを「シロユキ」と呼んでいました。
幼少の頃は自分の名前がエツコなのかイツコなのかなんて、気にもしなかったのに、物心がつきアバズレ始めていた思春期のエツコさんは、「ちゃんと呼べない名前をつけんじゃねェよ!」と積み木をくずします。
東京生まれで東京育ちのヒロユキくんは「シロユキ」と呼ばれていることに気づきません。
大好きなお父さんからちゃんと呼んでもらえない自分の名前にコンプレックスを抱き、反発心からか、お父さん達を悲しませることもたくさん経験しました。
大人になったエツコさんは、いつからかイツコでもエツコでも「どぉでもいいこと」と思えるようになり、大好きなお父さんを表現する時には「ムスメの名前をちゃんと呼べない父」として話しているウチに、そんな素朴なままのお父さんがもっともっと好きになりました。
家庭をもち、だいぶ大人になったエツコさんを、離れて暮らすお父さんは心配して時々電話をくれます。
「イッチャン、困った時は『イスッ!』、『オーッ!』、『イスッ!』だよ」
70歳をずいぶん前に過ぎた今も、ハニカミながら連絡をしてくれる照れ屋のお父さんです。
エツコさんは言います。
「あれじゃぁ、大海原で漂流してる時以外は助けてもらえないな!SOSってカタカナで書かせたらイスオーイスって書いちゃうかもね」
お母さんの目を盗んでは、スーツ姿に着替えた夜の帝王は、夜な夜な蝶たちの待つ街に繰り出します。
まだまだ元気でいてくれるお父さんを「ダンディー」と呼び、モテモテなヒーローから「エツコ」と呼んでもらえる日を夢見ることをあきらめた彼女は、次の帰省を楽しみにワルイ笑顔を浮かべるのでした。
めでたしめでたし
実話に基づいて構成されておりますが、物語に登場する人物と、皆さんが心当たる人物は別人です。と、書けと申しております。
犬のお父さんでさえ滑舌よくしゃべる時代ではありますが、お父さんがエツコやエスオーエスと言えるようになることを望むより、郷土の言葉だからこそお父さんの言葉なのだと受け止められるようになったら素敵だと思います。
エツコさんは、笑い転げながら話してくれましたが、私にはとてもあたたかい話に聞こえました。
外国語も必要でしょうが、日本には心のこもったあたたかい言葉がたくさんあることを忘れてはいけないんだと思います。
私は十数年前の仙台出張の際、国分町あたりの呑み屋で、カシスミルクと言えず、どうしても「カススミルク」と言ってしまうカワイイあの娘を思い出しました。
「シックスナイン」は言えたんですけど。。。
お父さんは福島出身で、お母さんは東京出身。
東北と関東のハーフとして東京に生まれ育ったエツコさんは中部地方のご主人との結婚を機に静岡に引越してきて、クウォーターとなる2人のご子息にも恵まれ、シアワセに暮らしていました。
それでもエツコさんには他人には言えない悩みがありました。
自分の名前があまり好きではないことです。
それは中学生時代にまでさかのぼります。
東北出身のお父さんはエツコさんのことを「エッチャン」と呼べず、「イッチャン」と言い、東京出身のお母さんはヒロユキくんのことを「シロユキ」と呼んでいました。
幼少の頃は自分の名前がエツコなのかイツコなのかなんて、気にもしなかったのに、物心がつきアバズレ始めていた思春期のエツコさんは、「ちゃんと呼べない名前をつけんじゃねェよ!」と積み木をくずします。
東京生まれで東京育ちのヒロユキくんは「シロユキ」と呼ばれていることに気づきません。
大好きなお父さんからちゃんと呼んでもらえない自分の名前にコンプレックスを抱き、反発心からか、お父さん達を悲しませることもたくさん経験しました。
大人になったエツコさんは、いつからかイツコでもエツコでも「どぉでもいいこと」と思えるようになり、大好きなお父さんを表現する時には「ムスメの名前をちゃんと呼べない父」として話しているウチに、そんな素朴なままのお父さんがもっともっと好きになりました。
家庭をもち、だいぶ大人になったエツコさんを、離れて暮らすお父さんは心配して時々電話をくれます。
「イッチャン、困った時は『イスッ!』、『オーッ!』、『イスッ!』だよ」
70歳をずいぶん前に過ぎた今も、ハニカミながら連絡をしてくれる照れ屋のお父さんです。
エツコさんは言います。
「あれじゃぁ、大海原で漂流してる時以外は助けてもらえないな!SOSってカタカナで書かせたらイスオーイスって書いちゃうかもね」
お母さんの目を盗んでは、スーツ姿に着替えた夜の帝王は、夜な夜な蝶たちの待つ街に繰り出します。
まだまだ元気でいてくれるお父さんを「ダンディー」と呼び、モテモテなヒーローから「エツコ」と呼んでもらえる日を夢見ることをあきらめた彼女は、次の帰省を楽しみにワルイ笑顔を浮かべるのでした。
めでたしめでたし
実話に基づいて構成されておりますが、物語に登場する人物と、皆さんが心当たる人物は別人です。と、書けと申しております。
犬のお父さんでさえ滑舌よくしゃべる時代ではありますが、お父さんがエツコやエスオーエスと言えるようになることを望むより、郷土の言葉だからこそお父さんの言葉なのだと受け止められるようになったら素敵だと思います。
エツコさんは、笑い転げながら話してくれましたが、私にはとてもあたたかい話に聞こえました。
外国語も必要でしょうが、日本には心のこもったあたたかい言葉がたくさんあることを忘れてはいけないんだと思います。
私は十数年前の仙台出張の際、国分町あたりの呑み屋で、カシスミルクと言えず、どうしても「カススミルク」と言ってしまうカワイイあの娘を思い出しました。
「シックスナイン」は言えたんですけど。。。
Posted by Nori at 13:06│Comments(0)
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