2014年08月27日

風林火山

風林火山あのアンジーさえも「元気が出る」なんて言っちゃう「タチアオイ」が町のアチコチに咲いていて、気にし出せばなるほどアチコチで見かけていた頃、甲府まで行く用事ができ、ソコまで行くならヤッパうまいソバでしょと、先輩に聞いてみると、「甲府かぁ。。。」と言いながら、天井を仰ぎ「専心庵・・・かな。。。」とソムリエ並みに答えてくれます。
「そーよ、そーよ、春チャンならソコがいいわ」と奥様も賛同します。
旅好きで美食家の先輩御夫妻は県内外問わず、絶景ポイントやその町の人達さえも知らないような食事処を知っていて、私の旅を助けてくれます。
今までにもいろんな場所やお店を紹介していただきましたが、ハズレたことはありません。
風林火山オフィスの近所のソバ屋で偶然会うこともあり、お互いに「オイシイ店だね」と、お気に入りの味が似てきたのかも知れません。

以前も書きましたが、ラーメン屋にしろソバ屋にしろ、「アソコはオイシイ」と紹介されて必ずしもオイシイと思えるお店ばかりじゃなく、人それぞれの好みがあるコトは承知していますし、もちろん私の舌ベラが、いわゆるオイシイと言われるオイシサを感知できるレベルでないことも隠しません。

風林火山静岡から甲府までなら1時間半・・・くらいかなと到着時間から逆算してみますが、1時間半の道中で何が起こるかわからないとなれば、やはり少し早めの出発を選びます。

国道52号線を一本道で北上することもできますが、用事がある以上、抜け道の多い富士朝霧ルートにしてみました。

朝霧高原を抜けるこの道は、ゴールデンウィークあたりの「芝桜」の時期には本栖湖付近で大渋滞になりますが、その時期をはずせば快適なドライブルートです。

風林火山放牧された牛や、青空に浮かぶパラグライダーを見ながら富士山の真横を通りますが、残念ながらこの日は富士山全体が雲に覆われその美しい姿を見るコトはできませんでした。
富士山が見える所に住んでいながら、家から見える富士山も、真下から見る富士山も大好きで、見る度にチカラをもらいます。不思議です。
頂上で、足元にある富士山もまた、達成感と共に偉大なる霊峰富士との一体感が感無量であるコトは言うまでもありません。

風林火山朝霧から甲府に抜ける精進湖では何かの大会なのか、たくさんの小舟が整列し、湖面に糸を垂れていました。
精進湖から甲府までの山道は、紅葉の季節もステキですが、新緑まぶしいこの時期もなかなかのモンです。
中央道の甲府南インターチェンジを右に見ながらまっすぐ進めば武田信玄公が鎮座まします甲府駅に突き当たります。

教えていただいた「専心庵」もナビによれば駅の近くのはず。
急ぎの用事でもないので、先にソバ屋の場所を確認しちゃうのは私のクセです。

風林火山目立った看板もなく、ナビに連れられるままクニャクニャと狭い道を右へ左へと進み、到着したのは住宅街の真ん中でした。
知らなきゃ絶対素通りだし、ナビがなければたどり着けそうもない「専心庵」は店の看板も控え目で、周囲の民家に完全に溶け込んでいる印象です。
開店前で、4~5台しか停められそうもない駐車場にはまだチェーンがかかっていました。
場所が確認できれば早々に用事を済ませ、それでもソバ屋の開店時間にはまだ早いと思えば、信玄公ゆかりの「武田神社」を攻めてみることにしました。
ゆるやかでまっすぐな上り坂の突き当たりに「武田神社」はありました。
風林火山見事な鳥居は立派な神社であることを想像させます。
みやげ物屋の軒先にはやはり「風林火山」と、「信玄もち」ののぼり旗が掲げられ、目隠しをされて連れてこられてもきっとココが山梨県だと言うことはわかってしまうんでしょう。
混み合っているとは言えない駐車場にクルマを停め、朱塗りの橋を渡り大きな石鳥居をくぐります。
宗教家ではありませんし無宗教ですが、その場所のシキタリには抵抗なく従い、拝殿で手を合わせます。
こうするのはキライではありません。

風林火山誰から教わったか忘れましたが、手を合わせ、願いごとをするのは「欲張り」なんだそうで、いつからか今日まで生きていることへの感謝と、「お邪魔します」とお伝えするだけにしています。

教えていただいた師曰く先様に「健康」をお願いしておいて、「暴飲暴食」ではムシが良すぎると言うわけです。
私ごときが「願いごと」など100万年と3日ほど早いんです。

風林火山境内には外人さん達の姿もありました。
彼らにはどんなふうに映るんでしょう。いやいや、私達よりよっぽど豊富な知識で日本の歴史的財産をお楽しみいただいているのかも知れません。

若い大学生のグループの姿もありました。
少々はしゃぎ過ぎな面は否めませんが、こういう場所を選んできたことに敬意を表し、目をつむります。

風林火山私はムスメ共々「過去にはこだわらない」タチなので、恥ずかしながら歴史認識は乏しいです。
信玄公がどれほどの武将だったのかさえわかりませんが、「宝物殿」が併設されているのならそれには興味があります。
地味なチケット売り場を通り、中へ進みます。
500年も前の先人達が作り出したすべては圧巻で、そりゃぁ宝物です。
ご本人達は、まさかこんな風に展示され、見せ物にするつもりなど毛頭なかったはずですが、私には理解できないような手入れもされているんでしょう。

風林火山経年劣化で朽ち果てていてもおかしくないようなものが、色鮮やかに飾られていました。

私の前に材料を並べられてもどう作ればいいのかなんて想像もつかない代物を先人達は、目的通りにカタチに仕上げています。

人を斬ったであろう刀には不思議と魅了されました。

特別公開されていた「孫子の旗」なるものには合戦の生々しいニオイのようなものを感じました。

風林火山ワケのわからないつたない説明で恥の上塗りをするよりは、ご自身で現地を訪れたりお調べになることをお勧めいたしますが、私はこの宝物殿から1時間ほど出て来れませんでした。
たぶん、興味がなければ5分以内で出て来れるんでしょう。
境内の水琴窟(すいきんくつ)や姫の井戸なんかに加え、甲陽武能殿と名付けられた舞台では「能」や「神楽」が定期的に演じられているようで、地域のみならず多くの人達に支持されている神社なんだと勝手に推測します。

風林火山わかったようなわからないような時間を満足し、「専心庵」に着いたのは1時前でした。

小さな駐車場は私が停めるスペースを残し、すべて埋まっていました。

作務衣(さむえ)姿で出迎えてくれたのは私より先輩に見える男性で、てっきりこの方が店主かと思えば、厨房の中にはソバを茹でる作務衣姿の方もいてホントのトコは不明です。

風林火山「初めてならセイロだろ!」とソバ好きの先輩達の教え通り、「せいろ」を選びたいのですが、そのせいろにはいくつも種類があり、迷っていると「こちらでどうでしょう?」と店員さんに決めていただきました。
「十割蕎麦です」と出てきたのは見るからに10割のイイ意味で無骨な蕎麦。
クチに入れなくても絶対おいしい見かけは、裏切ることなく楽しませてくれました。
続いて出てきたのは「二八蕎麦」で、最初に10割を経験しちゃっているので、風味と共にノドゴシも楽しい蕎麦でした。
蕎麦豆腐なる逸品もクズモチのような食感で、デザートといったところでしょうか。
こちらもなかなかです。
風林火山「蕎麦湯です」と出てきたのはドロドロと白く濁った濃厚なもので、立派な陶器のウツワに入れられていて、そこらの茹で汁とはまったく違うことは一目でわかります。
香り高く、麺ツユで割らなくてもかなりおいしくいただけました。
店内設計や調度品にこだわったコジャレタ雰囲気はないものの、「味一筋」で勝負している潔さも気に入りました。
この日の店員さんは私よりも先輩に見える男性ばかりでしたが、「味」で勝負しているんですから、「一輪の花」が恋しいなどと下世話な発想がよぎることもありませんでした。
「天ざる」好きの私としては、天ぷらがないのは少し残念な気もしましたが、メニューに無いなら、お考えがあってのコトでしょう。
店員さんにおいしく満足できたことを伝え、店を出ました。

風林火山時は1時半を過ぎた頃。
普段八ヶ岳へ向かう道中で、素通りしてしまうこの町にもう少しだけ留まる時間はありそうです。
駅前で見た大きな看板を思い出し、「昇仙峡」を目指すことにしてみました。
微塵の予備知識も無いまま、看板を追っかけて市街地からほどなくして山道を駆け上がります。
下りてくる対向車はどれも他県ナンバーで、きっと彼らも「昇仙峡」に行ってきたんだと思われます。

風林火山甲府市街を一望できる見晴し台?とかいう展望スポットからチラッと見えた町並みは絶句モンで、見える限りに埋め尽くされた「平らな町」は、盆地ならではの美しさで有名夜景スポットでもあると誰かに聞いたことを思い出します。
すぐにそれらしい景色に変わり、ドライブインのような大きな駐車場にたどりつきました。

目の前にはどこかで見たことがある渓谷がそびえ立ち、「昇仙峡」の入口です。
風林火山さっきまでピーカンだった空からはポツポツと雨が落ちてきましたが、青空もありにわか雨の中、背伸びをしながら渓谷に見とれていると、ニヤついたオヤジが近づいてきて、頼んでもいないのに、いきなり目の前の渓谷の説明を始めます。
要は、昇仙峡は渓谷美を楽しむ場所で、全長5キロほどの区間の中で、滝を楽しんだり、川のせせらぎに耳を傾けたり、自然の偉大さを感じながら散歩する場所のようで、クルマをココに置いて往復して来るもヨシ、折り返し地点となる上流までタクシーで移動して、片道だけ楽しんで戻ってくるもヨシ、と言葉巧みなタクシー運転手の営業トークを聞かされてしまいました。

「私の案内で、片道たったの900円。ガイド付きなんだから安いモンだよ」と、ナニが基準かはわかりませんが、雨粒も大きくなってきたので、運転手の言いなりになって片道だけ楽しむことにしてみました。

風林火山乗り込んだタクシーから見えた看板には、「強引な客引きにご注意ください」と書かれています。
「ねぇ、オレ、まさに今、強引な客引きに乗っかってる最中?」
「お客さん、気にすることはないですよ。あれはみやげ物屋が勝手に作ったニセ看板ですから・・・」

雨はゲリラ豪雨に変わり、絶景も雨の向こうに消えてしまいました。
決まりごとなのか、タクシーはところどころで停車しながら、渓谷の名前や由来なんかをガイドしてくれますが、窓も開けられず、「ふむふむ、なるほど」と合の手を入れるだけです。
自慢のロープウェーも「今日はやめた方がイイ」と私のぶらり旅に指示を出します。

風林火山10分もかからずに折り返しポイントとなる上流地点に到着しますが、雨はやむ気配もなく、遠くに青空は見えるものの、みやげ物やが並ぶ街道で雨宿りです。
水晶とかがとれるらしく、価値のわからない様々な石が、たくさんのゼロをつけて売られていましたが、今の私に必要なのは傘と長靴です。
15分ほど雨を見ていたでしょうか。明るくなり、霧雨みたいになった瞬間を見逃さず、歩き始めます。
長い階段を下り切る頃、近づく大きな音と共に現れた「滝」は迫力満点です。

風林火山連日の雨で、水量も多いのか、先日見てきた「福養の滝」とはまた違った美しさを見せつけます。
すっかり整備された遊歩道ながら、ゲリラ豪雨の直後とあって水たまりをよけつつ、切り立った渓谷を見上げつつ、なかなか忙しい散歩です。
木漏れ日と共に霧状のシズクが無数に落ち、幻想的な景観を作り出していました。

甲府市街地からわずかに30分。
隣り合う空間ながら、全くの別世界に心は踊ります。

風林火山クルマを残してきた駐車場に着く頃には、空はすっかり青空に戻っていました。
USJに突然現れたハリーポッターの世界もすごいらしいデスが、甲府盆地に現れる「昇仙峡」は長い時間をかけて自然が生み出したものだと考えると、一層神秘的と言うか、運転手が言っていた「偉大さ」みたいなものを感じずにはいられませんでした。

興奮気味に釜平の母さんに話すと、「今さら行ったの?」と、冷ややかな反応ですが、いつまでも美しいものを美しいと言える自分でありたいと、いずれまた時間をたっぷりとって「昇仙峡」を訪れることを誓うのでした。

長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。そしてごめんなさい。      



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Posted by Nori at 21:51│Comments(2)ぶらり旅
この記事へのコメント
こんにちは。
静岡から甲府まで1時間半で行けるんですね。
もっと時間を要するのかと思っていました。
武田神社の写真を見て、懐かしく思いました。
もうかなり昔、昇仙峡や武田神社を訪れました。
美味しいお蕎麦に出会えて良かったですね。
その後、子供たちと山中湖、河口湖などにも
行きましたが、その時は山梨名物の吉田うどんを
食べましたが口に合わず残してしまいました。
それがつい先日に、孫が学校が行う勉強合宿で
山中湖のホテルに5日間滞在した時、吉田うどんが
食事にでたそうです。それが美味しかったようで
お土産に買ってきました。早速食べてみました。
それが美味しかったですよ。話によると富士吉田に
19軒も吉田うどんを作る工場があるらしいですね。
駅の道などは、観光客が集まる所ですから
美味しく食べさせて良い印象を残す努力がほしい
ですね。
Posted by なっちゃんなっちゃん at 2014年08月28日 12:53
なっちゃんさん、こんばんは。
静岡はかなり涼しいです。先ほどまでパラついた雨はやんでいるようですが、一時期のまとわりつくような湿気と違い、気持ちいい感じです。
昇仙峡も武田神社もずっと昔から存在するわけで、今さら私ごときが報告しなくても皆様の方がよっぽど知ってらっしゃるんでしょうが、今さらながら小僧が新発見でもしたかのように感動してるんだと大目にみてください。
それにしても長文になってしまい恐縮です。
まだまだ知らないことや場所がたくさんありすぎて恥ずかしい限りですが、私は案外楽しんでいます。
吉田うどん・・・気になりますねぇ。
アッチ方面ですと、なかなか仕事がらみというのはありませんが、紅葉の時期も目の前だとしたら、散策がてら出かけて、吉田うどんネタを披露できるかもしれませんね。
Posted by NoriNori at 2014年08月28日 19:45
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