きせつのはるにたんぼのＴＡ

せっかく寝つけた夜なのに、トイレのために目が覚め、仕方なくトイレに向かいます。
「目が覚めただけイイか。。。」と、まだしばらくは薬局の「大人のオムツ」コーナーには行かなくても大丈夫そうですが、念のために頻尿対策のオクスリがいくらくらいなのか今度見てきます。

「寝た子を起こすな」とはこのことで、テレビをつけたら午前２時１７分。
優しい音楽と共に、蒸気機関車が機関車名と撮影時期を表示しながら走っていました。

ナレーションはなく、ひたすら黒い煙の混じった白い煙を上から下から吐き出しながら走っているだけの映像です。
年代順に映し出される光景はなぜか心地よく、ぼんやり見ていました。
それまでモノクロの映像だった蒸気機関車が、昭和４３年当たりを境にカラーになり、幼少期を過ごした我が家の２階にあった細い４本足の白黒テレビを思い出しました。
テレビがチラチラと電波の調子が悪いと、叩いたり、コンバーターのボリュームをいじったり、仮面ライダーの触角のようなＶ字型のアンテナを閉じたり開いたりして感度を調整していました。

もちろんリモコンなどもなく、ガチャッガチャッガチャッと１段階ずつ回すチャンネルも絶妙な位置があって、金庫破りの人がやるように、チャンネルに顔を近付け、ソ～っと回したりしていました。

若い人には何のことやら・・・？という話しかも知れませんが、現在の３０歳前後の人達は「ドーナツ盤」がわからないらしいと、ラジオで言っていました。


蒸気機関車の走っていた時代の風景は、山間地であったり、田んぼの中だったり、ひたすら「昔」で、気がつけばどの映像も「単線」でした。
詳しいことはわかりませんが、次から次に、同じ方向に追っかけるように機関車が走っているようには思えず、始発駅を出たら、終着駅から戻ってくるまでは機関車に乗ることができない「のんびり感」は、５分も待てば次の電車が来るし・・・と、私鉄が走るありがたみも良くわからなくなったこの時代に育った私にとっては、実は「乗り遅れてなるものか！」と言う当時の人達の「緊張感」にはどうしても結びつきません。

静岡にはＳＬが現役で走っている「大井川鉄道」が存在し、今頃は沿線で賑わいを見せる「桜トンネル」も桜吹雪を舞い上げつつも、桜になっているのかも知れません。

地元の人が売っていた「鮎の塩焼き」を片手に、数十センチ先を走り抜けるＳＬは、やはり迫力もありますし、その力強い走りとは反してノスタルジックな思いに馳せる瞬間も好きです。
のどかな町並みを散策しながらのプチドライブが好きで、「おにぎり」を持って何度も足を運んでいます。

しかしながら現代では、あれだけの煙を吐き出しながら走れば、近隣住民のクレームの心配もありそうです。

いずれ鉄道関連の博物館でしか見られなくなるであろうＳＬも、その頃になって復活して「期間限定で線路上を走ります」なんて企画が持ち上がれば、それまで見向きもしなかった乗車希望者が殺到するのは目に見えていますが、現存する古き良き時代の「大切なもの」を大事に守っていくことができたらイイと思います。

蒸気機関車が今のカタチになったイキサツはわかりませんが、リニア中央新幹線で、東京-大阪間が１時間チョットでつながることになれば、既に日帰り出張圏内と言われる同区間内を移動する出張マンたちが、その地域性や文化を知ることもなく、あくまでもビジネスライクに目的を済ませ、また速やかに元の場所に帰っていく光景を思い浮かべると、益々人間らしいおつき合いがなくなってしまうようで、残念です。
メーカーさんやお客さまたちと朝まで、おいしいものを食べ、飲み明かした北海道から、九州でお世話になった各地の出張が懐かしいです。

「狭い日本、そんなに急いでドコへ行く・・・」
地方ごとの暖かみや、おいしいものは、もはやテレビの中の世界になり、「地方発送承ります」なんてＵＲＬが表示されて、クリックひとつでどんなに離れていても翌々日にはいつもと変わらぬダイニングで口に入れることができます。
香川の「うどん」も、鳥取の「アゴちくわ」も、長野の「おそば」も、静岡の「桜えび」もその町で、そこの空気ごといただくからおいしいのだと思います。
海外にもいろんな町があるんでしょう。
でも、国内を旅歩き、ゆっくりなキモチで日本を愛せる余裕ができたらいいなと感じています。

・・・と、ちょっと急ぎ気味に小走りでトイレに駆け込む深夜でした。