きせつのはるにたんぼのＴＡ

お客さまからたいへん興味深い話しをお聞きすることができました。
「手を入れない覚悟」という考え方があるのだと言います。
地球という星に生まれ、果てしなく長い期間、知恵を絞りながら進化してきた人間は、動物たちのように野山や草原で暮らす生活から、雨露をしのげる屋根のある暮らしを覚え、持てる限界の壺を持って遠い水源まで水を汲みに行くのではなく、集落の近くまで、水路を作り、集落となった土地が狭くなれば、山を切り開き、もっと大勢の人間が「便利」を分けられるように工夫をしてきました。
時には住まいに適さない土地があれば、削り取り、埋め立てをし、人間の都合に合わせて地球を加工しています。

自然界には自然界のルールがあって、あるがままの恩恵を受けているうちは良かったのですが、人間が「手を入れた」ものは、手を入れた分だけ、自然界のルールに反しているというお話でした。
必ずしも言い切れるわけではないと前置きした上で、人間が触った川は氾濫し、山は崩れる。
そうなれば復旧と称して、また「手を加える」。
でもそれは自然界のルールとは違うわけで。。。

こうして繰り返された現状の中で、ある時はヒートアイランド現象を引き起こし、またある時はビル風などによる今までにはなかったような突風を作り出してしまいます。
手を入れてしまったがゆえに、もしかしたら砂漠化し、それが風にあおられ、隣国にまで降り注げば、地球が受け入れたいと思っている広さの砂たちが大移動をし、屋根付きの生活をしている街だろうが、そうでなかろうが、あるべき姿を求め、自然であることを望むのだといいます。

大きな被害を出した津波も、キモチよく海岸で潮騒を奏でていた頃のように、あるべき姿で寄せては返すサイクルを防波堤に阻まれれば、海流を変え、居心地のいい場所に移動していくのだと聞けば、「羽衣の松」で有名な三保の外海も海岸が波に削り取られ、昔は波打ち際に行くまでには一汗かけそうな距離も、現在では「羽衣の松」から目と鼻の先となっています。
たしかに潮の流れの上流では、大規模な埋め立て工事が行われ、アメリカの西海岸を走っているような立派な道路ができ、観光客を取り合う「石垣イチゴ」に関わる方たちや、大きな貨物車輌も合理的で便利な道路の完成を喜んでいるはずです。

「天女伝説」と引き換えに手に入れた人間の都合は、その現実を知りつつも、加速度的に開発、整備の名の下に、進められています。
公共事業がどれほど重要なのかは度々メディアでも取り上げられ、時には凍結したり、知らぬ間に復活したり、アレほどいわれる年度末に道路を掘り返す作業も少なくなったとはいえ、未だに続いています。
埋める分だけどこかが削り取られ、そのアオリを地球自身が修正していく過程で、人間にとって災いとなる自然現象が引き起こされているのだとしたら、すべての修正が終わるまで、「手を入れない覚悟」をするべきではないかという考え方でした。

私が生まれてからずっと目の前にある富士山も、それを取り巻く山々も大きく姿を変えることなく、ありのままの姿を見せてくれています。
山をくり抜いてトンネルを作るから崩落事故もあるのでしょうし、無理矢理水の流れを変えるから、津波で知った自然の強さを身を持って感じ、悲しむことになるのかもしれません。
地球を形成する上で、あるべくしてあるはずの水や大地の絶対量は決まっているという人もいます。

むやみに埋め立てて人間都合で歩ける大地を増やすことで、行き場を失った水もまた、水であることを維持するために反撃に出るのではないのかと思います。
海に生きる魚たちさえ、住処を奪われれば何らかのカタチで私たちを痛い目に合わせるのかも知れません。
アスファルトで固められた道路に文句をいう人はいないでしょう。

しかし、指を吸うからと、手袋をされた喋れない赤ちゃんがいつの間にか手袋をはずしてしまうように、地球もアスファルトに亀裂を入れるタイミングを見計らっているのかも知れません。
４月バカの昨日、「富士山爆発寸前！異常微振動を自衛隊が緊急観測中！」なんてニュースが絵文字付きで飛び込んできましたが、まんざらエイプリルフールのタワゴトとは思えない微妙なジョークニュースだと感じました。

ご機嫌を取ってみようと、頼まれてもいない「３時のおやつ」をムスメ１号の会社に差し入れることも、強風で道路に転がった釜平の鉢植えをせっせと片付けることも、アンジーが洗い忘れたマグカップを洗ってやることも、「手を入れる」ことなく、自然に任せて見守ってみる勇気と覚悟を学ぶべきかも知れません。