2012年12月20日

救世主現る

救世主現るわざわざ自分の弱点をさらけだすこともないのでしょうが、私は「鳥」が苦手です。

その歴史は古く、小学校時代にまでさかのぼります。

当時は家でも大きな鶏を飼っていましたし、学校でも「生き物係」でインコや鶏が同居する飼育小屋に入ることもナンでもなかったはずなのですが、思いつく限りを考えてもたぶん授業で行った「タマゴのふ化」が原因だと決めています。

救世主現る「ふ卵器」と呼ばれる温度を一定に保つ器械にタマゴを入れ、親鳥が温めるのと同じ条件に基づき、タマゴからヒナが誕生するまでの様子を観察する実験が、小学校4年生くらいの頃に授業で行われました。
タマゴにライトを当て、透けた中身の変化や大きさを記録し、それがヒナ鳥に成長していく過程だと教わります。
ひとつやふたつのタマゴではなかったと記憶していますが、子犬が成長していくように、外から見ただけではわからない成長に胸を弾ませ、神秘的な生命の誕生を楽しみにしていました。

救世主現るそれまではカエルのタマゴがオタマジャクシになり、手がはえ足がはえカエルになる様子や、自分で着替えができたり、寝小便が治っていく弟たちの様子を見てきましたが、カタチや大きさの限定された中身の見えない殻の中で、きっと殻ばかりが大き過ぎることも小さ過ぎることもなく、ピッタリサイズで生まれてくることの不思議や、タマゴがけご飯で出会うアノ黄色い丸とトロッとした透明の液体が、どうやったら生き物になるのか、それはそれは楽しみ以外の何ものでもありませんでした。

ある日の観察で、先生の顔が曇ったかと思うと、ひとつのタマゴを取り上げ、残念なお知らせの発表がありました。
「と、途中じゃん、マダ・・・」
全部のタマゴがヒナになるとばかり思っていた少年は、「途中で終わりもアリなのか。。。」とすごいショックを受救世主現るけたことを覚えています。

「アトもう少しだったのにな。。。」と先生はやらなくてもいいのにタマゴを割り、羽根の乾いていないギリギリアウトの状態を披露しました。
生まれてくれば、あのフワフワとした黄色い天使となる前の姿は、私にとっては耐え難い光景で、まぶたのない目も、熊手のような足も、口なのに爪みたいなクチバシも、理解することも受け付けることもできなくなってしまいました。

救世主現る人生の中で度々トリに関わる場面はありませんが、リーゼント時代に一瞬おつき合いをした彼女の家で、カワイイでしょ?と手の上に乗せられたインコがチョンとジャンプしただけでビビッてしまい、その恐怖から逃れたいあまりに運悪く壁に投げ付けてしまう事故も、元を正せば小学校時代の授業だと認識しています。
現在ではトリもおいしくいただきますし、バーベキューではアタマと熊手のついていない丸鳥にピラフを詰め調理することもできるようになったのですが、依然として羽根のついた鳥は例えハクセイであっても触ることができません。

そんな私なのに。。。

救世主現る昨日、ベランダの隅に微妙な大きさの怪しげな物体を発見しました。
目の悪い私は即座に判断することができず、「と、鳥?」と思ってからは確認することができません。
アンジーを呼び、確認させると「まさに鳥ね」と確信に変わります。

♂「・・・」
♀『・・・』

無言な時間が過ぎ、解決しない時間が積み重なっていきます。

「業務命令を発令する・・・」
「ムリムリムリムリ!」と何度ムリと言ったかわからないほどの仕事放棄ぶりに、やはり解決はしません。

救世主現るその上、放っとけば骨になるジャンとか、アタマが見えないからきっと窓に突っ込んだのねと、アタマがカラダにめり込んだ姿を想像させ、ココが1階だったらネコとかが取ってくんじゃない?とか、何一つ解決には至りません。

そこに現れたのがクロネコヤマト。クロネコなら2階まで来てくれます。
ダメモトで「鳥、拾えます?」と聞いてみるのですが「業務外なので」と。マジメかっ!?

鳥の存在に気づいたのが昼過ぎ。
時は夕方。

救世主現るあの場所から鳥が移動さえしてくれるのなら土下座もできる状態に追い込まれた私は、最もアタマを下げたくないクリチャンに電話し、事情を話すと、ゲラゲラ笑いながら「またかっ!?」と声をひっくり返しながら電話の向こうで笑い転げます。
以前にもオフィスの窓にハトが突っ込み、まったく今回と同じ状況になったことがあり、クリチャンに助けてもらいました。

「またハト?」
「わからない」
「大きい?」
「それほどでも」
「今日は用事があって行けないので、明日。」
「よろしくお願いします。」

救世主現る明日でイイわけはありませんが、私たちだけでは年が明けたって解決しません。

本日、救世主は現れ、いとも簡単に作業は完了します。

「よく怖くないね。。。」

「よくこんなのコワイな!」

アンジーの推測に反し、アタマはカラダに埋め込まれておらず、クリチャンの手の中で死後硬直もなくやわらかそうでした。

「これはシロハラだな」

救世主現る自分の3人ムスメに鳥の名前をつけちゃう鳥博士でもあるクリチャンは続けます。
「シベリアからやっと来たのになぁ。。。ツグミ科で渡り鳥なんだよ。」

アダルトビデオの女優名を全部言えるヨーイチもスゴイですが、このオッサンも鳥の名前を全部言えます。

鳥を触った手でアチコチを触られたくない私たちの要望により、クリチャンは手袋をしていますが、素手で触れるツワモノです。

私だってシベリアまでの道順がわからないのに、それを知っていてはるばる到着したクセに、窓に突っ込むほど何を慌てる必要があったのでしょうか。

救世主現るそもそも脱北者でさえ、命がけで渡ってくる大海原を飛んできて、なぜ汗びっしょりになって《はぁはぁ》《ゼェゼェ》してないのかも不思議ですし、「もぉ手羽がプルプルしちゃって・・・」と首をコキコキさせながら手羽をモンでる姿も見たことはありません。

行ったり来たりするより、日本に永住しちゃえばいいと思うのですが、また帰っていくアホな鳥に翻弄された2日間でした。      

写真を見てるだけでもゾクゾクしてしまうことが判明したことも告白しておきます。





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