2012年08月31日
人間に必要なもの

昭和54年に角川書店が発行した和英辞典にはあいにく掲載されていませんでした。
驚いたことに、ネット上でも明確な定義付けをしているサイトを見つけることができず、いきなり「活動の勧め」のような具体的な活動報告がヒットします。
しかしながら、概ね「報酬の有無に関係なく自由意志で奉仕行為などを行うこと・行う人のこと」と、まとめられると思います。
私は自分達の活動をこの言葉でまとめられる事が好きではありません。
地域活動にしろ、個人的に取り組んでいるものにしろ、たった一人でこっそり取り組まない限りは「ボランティア」という単語を避けて通る事はとても難しいです。
ヤらないよりはヤった方がいいと思いますが、テレビ局を呼んだり団体名を大きくかざし、意図が他にあるように見える活動をされている方たちほど「ボランティア」という言葉を使っているのが理由のひとつです。
アンジーに紹介され、1冊の本を読みました。
世の中には私たちの知らない仕事がたくさんありますが、この本は「障害者の性」と「ボランティア」の関係を綴ったルポタージュです。
著者はできるだけありのままを表現していると思いますが、極端に賛否が分かれるであろうテーマに、対岸から安易に感じた事を書く事はフェアではないと考え、タイトルは伏せますが、著者は河合香織氏です。
アンジーからあらかじめ予備知識をいただいていたので、タイトルだけで興味本位に読み始めることはありませんが、読み始めてすぐに感じるものがありました。
「そもそも障害者は、都合のいい時に権利ばかり主張して、選挙さえ行こうとしない世間知らずな人が多いんだから。」この文章は障害者を否定しているのではなく、ある障害者の生きざまを前提にした文章で、権利を主張して誰かを頼るのではなく、自分で勝ち取れ!という、現場で苦悩する関係者の言葉です。
障害者側に立った言葉として受け止めましたが、中途半端なボランティアならビジネスにした方がお互いのためだとも言っています。
身体障害者・知的障害者・・・。
様々な事例が紹介されていますが、これほどまでにちゃんと意味を理解して読まなければと、何度も前に戻り、読み返した本はありません。
読み終わり、スッキリもしませんし、得るものがあったかどうかもよくわかりませんが、ナニかを感じているのは事実です。

種類こそ違えど、志しと言うか、根っこの部分が似ているが故に「無償奉仕活動」に関係するどちらの立場にも甘えが出てしまい、継続が難しい実態を、なかなか外部からは理解してもらえない部分は似ていると思いました。

どこかのクラスだけが得する事もなく、どこかのクラスだけが我慢する事のないように、譲り合い、高め合える学級会を見習ったらどうでしょう?!野次も居眠りも御法度なのは当然です。

自分達の1票の責任がわかれば、それなりに国政に対し関心を持つのではないでしょうか。
短絡的にバラ巻かれるオカネだって遠慮しちゃうとか、愛煙家の人たちが1本当たり10円ずつ税金を払いたいと言ってくれるかも知れません。
それともまだ既得権益を主張して賛否がまっぷたつに分かれ、内戦とかに発展しちゃうのでしょうか?
国民不在で法案が通るのなら、議員不在の逆もありかと、皮肉っぽいオチまでエラそうに書いていました。

「障害者だから、助けてあげないと」と、うわべだけの誤った認識は、本当に必要な応援とは距離があるのかもしれないです。
3.11の被災者の皆さんが同じようなことを言っていると気づきます。
いろんな考え方があるのは理解していますが、千葉方面の魔法の国が障害者を最優先ゲストと考えているのは、障害者の皆さんが望んでいることなのかな?と、また私のバカな脳みそが考えました。
計算し尽くされたテーマパークが結論としている以上、間違いではないと思いますが、障害者の皆さんのキモチと一致しているかどうかはわかりません。
著書の中にも書かれていましたが、私自身を省みて、「ボランティア」という言葉を、ともすると免罪符にしてしまう傾向をもう一度考えてみる必要がありそうです。
登場人物に賛同も同情も、ましてや否定論もありませんが、彼らの生きざまや、知ったつもりでいた世界に触れられた貴重な時間でした。
「神様はいじわるよね。彼のような人にまで、欲を与えるなんて」
「苦しい事があるかもしれないけど、それでも自らが欲するものと向き合えない人生の方が辛いと思う」
そう答えたが、その自分自身の言葉も少しむなしく響いた。
~本文より引用、一部加筆~
この本に書かれた実在する世界は、一時の感情や偏った正義感・道徳感で安易に首を突っ込める世界ではありません。
広義ではボランティア全体に言える事かも知れません。
自分のできる範囲で、ヤらないよりはヤった方がイイというスタンスは、読書後もさほど変わったとは思えませんが、ボランティア活動が良い活動だと一方的に決めつける概念は捨てるべきだとこれまで以上に思いました。
決してお勧めしませんが、私にとって出会えて良かった一冊となりました。
Posted by Nori at 09:26│Comments(0)
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