きせつのはるにたんぼのＴＡ

私のブログに度々登場する釜平。

遠方の皆様にはナンのことやら？という釜平ですが、私のオフィスの前にある小さな居酒屋です。

私にとって第２第３の母と呼べるカアサンがひとりでキリモリする他ではあまりお目にかかれないお店ですが、公私にわたりお世話になっています。

開店してから２０年近く、長年に渡り地域の胃袋を楽しませてきたお店です。

開店当初は別の場所にあったようですが、私がデビューした時には既に現在の場所で営業していました。
カウンターには１０名ほど。
隣り合うふたつの個室はそれぞれ４畳半ずつで、大きな宴会がある時には二つの部屋をつなげて使っています。

その昔、小中学校の体操着や衣料品を販売していた空家を改装し、和風なたたずまいは一見、敷き居の高さを感じる方もいらっしゃるようですが、むしろチェーン店の居酒屋でアレもコレも頼んで割り勘にするより、ずっとリーズナブルだと思います。

私鉄駅前に位置しながら、繁華街と言うには程遠く、かつて商店街と呼ばれた時代の面影は全くなくなってしまった田舎町の居酒屋ですが、その料理を求めて遠方からはるばる見えるお客さまや、出張帰りには必ず寄りますなんて言うお客さまもいらっしゃいます。

ミシュランが星をくれるかどうかは知りませんが、チューボですよ！なら星を３つもらえる料理もありそうです。

釜平の特長のひとつにはメニューがないことが挙げられます。

「とりあえずナマ！」と言ったアト、カウンターに並べられた大皿やネタケースの中のモノを指差し、「コレ！」で発注完了です。

アトはそれを繰り返すだけです。

あっちのお客様は、こっちの料理が見えませんから、お店に入ったら一通り本日のメニューを確認しておくのがコツです。
忘れちゃったら見に行けばいいだけです。

メニューがない店なんてほとんどありませんから、それこそコワイと思われるかも知れませんが、聞けば値段を教えてくれますからご予算に合わせてお楽しみいただければいいと思います。


値段が分かりにくいお店ですから、カップルで来た男性が、お帰りの際に彼女にこっそり支払いをするのですが、意外と払わないのに、女性が「高かったでしょ？」なんて言ってるシーンもよく見かけます。
満足げに帰る男性の鼻は高そうに見えます。
隠れ家的に使われている方も少なくないようです。

常連さんも多く、「今日はひとり？」と聞けば、股間を指差し「ふたり」と答える人や、ハゲたオジさまに「元気でした？」と聞けば「ウブゲがはえてきた」とアタマをなでながら「床屋に行ったらナニしにきたの？って言われた」とトンチの効くお客さまに出会えることもあります。

女性の常連さんが多いのもこの店の特長かも知れません。
家庭料理のような、でもそうじゃない料理を食べながらカアサンにレシピを聞いているお客さんもよく見かけます。
以前も投稿しましたが、年配の御夫婦も多いです。

とろろに梅肉をはさみ、シソの葉で巻き、油で揚げた「カマヘイアゲ」や、うすく伸ばした白いご飯にほぐした鮭を乗せ、両側からノリで挟んだ「ヒラムスビ」、黒米を韓国海苔で巻き上げ、シラウオやナマジラス、ウニ、梅肉などを軍艦巻きにした通称「クロマイ」は人気メニューで、大阪から月イチペースで遊びに来る友人もお気に入りです。
いつでもあるメニューではないので、来店日が決まったら、予約ついでにリクエストしてみたらいかがでしょうか。おいしいですよ。

旬の食材や、珍しい食材にこだわっていますので、それが見つかれば１７時のオープン前に信州方面まで買い付けに行っちゃう７２歳です。
びっくりするような大きなナスや椎茸なんかも上手に見つけてきます。
最近ではナマでも食べれる朝採りトウモロコシなんてのもメニューに加わりました。
苦手だったカツオの刺身や、夏のトウガンは釜平で食べれるようになりました。
イルカも食べれますよ。

もうひとつの特長はトイレです。

「トイレにはキレイな神様がいるんやで」なんて涙流しながら聞くほどの歌が流行りましたが、そろそろ飽きてトイレの話題からも遠ざかった現在、釜平のトイレから戻ってきたお客さまが「トイレ、スゴ～イ！」って言うお店です。
なぜかトイレが有名な店でもあります。興味があればご自身でご確認ください。

自称、７２歳のお婆さんがひとりでキリモリしていますから、混んでる時にはなかなか料理が出て来ないこともあります。

カアサンがすっかり落ちついてレジ横の椅子に座り、おもむろに老眼鏡をかけ、新聞を広げ始めたらオーダーを忘れていますから適切な指示をお願いします。

自分が頼んだナマが違うお客さまに運ばれていくこともありますが、運ばれたお客さまは笑顔で受け取る余裕が必要です。
そして自分は「３杯目ちょーだい」と優しく新鮮なキモチで新たに発注しましょう。

ビールの数だけは「わからなくなっちゃう！」と言う理由でジョッキを片付けないのがシキタリです。

そんな釜平ですが、ひとりのキリモリで仕込みもままならず、釜平らしさを維持するためにまさかの「仕込みデー」を設ける決断をあっさり決めました。
良い食材の買い付けや、料理の仕込に時間をかけるというもっともらしい理由です。
お客さまを代表して反対陳述を行いましたが、「アタシの勝手でしょ！」と却下されてしまいました。
従いまして、８月より日曜・月曜・火曜日＆祝日は定休日となります。

勝手ついでに言っておきますと、客足が途絶えると、「ナンデ来ないんだか？」と、２１時半に潔く店仕舞いをする場合があります。
深夜に日本代表の試合がテレビ放送される時も注意が必要です。

客もたるんではいられません。

押し掛けるテレビ番組や雑誌取材も「ムダに忙しくなるから」と一切応じない店ですが、カアサン自体は昼間スパッツ履いて飛び回る気さくな婆さんです。お店ではお着物でお待ちしております。

ＪＲ草薙駅でタクシーに乗って「釜平」と言えばわかるお店です。
５分程度でつきます。

お電話でご予約の際は、「ナンセひとりでやってるモンですぐには出れない！」場合があるようです。
人間には２本しか手がないことや、年配者の歩幅も考え、３分くらいは呼び出し音をお楽しみください。頑張ってください。


彼女ができたら、会議が終わったら、歓送迎会に、上司のやり方が気にくわなかったら、うっかり通ったら、アブク銭が入ったら、たまには変わったお店で一杯！もいいかもしれませんね。

先日、「先輩に誘われ記憶がなくなるほど呑んだ夜、数々のご無礼、失言および暴言を帳消しにするキャンペーン」でした。