2013年01月30日
炎と愛の綱引き
いつもの指定席に座ろうとすると、店の奥の方から何やら怪しげで熱くてイヤラシイ視線を感じます。
63歳にしてサモアの少女との婚約にこぎつけたザアさんの手招きにより、コッチに座れと、婚約ができてしまうほどの得意のジェスチャーで呼んでいるようですが、浮かれたオヤジの話しを聞く気分でもなく、放っておくと、まもなくザアさんが移動してきて私の横に座りました。
いつもニコニコなのか、ニヤニヤなのか、それともヘラヘラなのか、笑顔の耐えない人で、瓦職人のクセに屋根から時々落ちるオチャメな人です。「いやぁ~スッゴイ強風でまた落ちちゃったよ」と、今日も落ちた話しから入ります。
「プロなんだから、落ちないショ。フツー」と言えば、「足腰が弱くなるほどプロを続けちゃったよ」と、会話に空白を作らない人でもあります。
ケガもなく、こうして呑んでいるのですからプロといえば、プロなのでしょう。
「どうスか?サモア、その後・・・」
短い単語で切り出すと、今夜はヤシガニの話しからスタートです。
「はるちゃん、ヤシガニパーティーなんだけどさぁ。。。そこら中にヤシガニは居るんだけど、現地のヤツらは食べないのよ。従って加工品もないわけで、空港でヤシガニがガサガサしちゃったら逮捕されるのかなぁ。。。ワシントン条約とかで。。。」
ザアさんは生身の少女を持ち出すつもりでいることが、既に逮捕なのに、ザリガニごときでビクビクしています。
「じゃぁ、塩ゆでかナンカにして持ってきて」
「ダメダメダメダメ!オレ、現地で目をつけられちゃッてるから、アイツらが食わないものを茹でたりしてるのを見つかったら、また大騒ぎだよ」
「ナニ、またって。。。」
国境をまたいでご迷惑をかけている予感を放っておくことはできず、私も重いコシを上げて、話しに乗ッかってみることにします。
「彼女は今は18歳だけど、知り合ったのは10年前。オレがはるちゃんチくらいの頃に8歳の子どもと南の楽園で会ったら、コッチもしかめっ面なんかしてないわけで、何度か旅行を繰り返すウチに、顔見知りのオッさんと島の子どもたちは『イェ~イ!』なんて、ハイタッチとかしちゃうわけよ。」
・・・どんだけ顔見知りになっちゃうんだ。。。
「こっちはさぁ、行く度に島の子どもたちがハイタッチしてくるから満面の笑顔でお応えしてきたわけよ。でもな、それが現地の大人たちの目には怪しいジャパニーズが、島の子どもたちをタブラかしてるんじゃないかってウワサになってたらしくて、彼女が結婚を決意した時、島が動いたのよ。」
・・・笑顔が罪になる人、初めて会いました。
「え?どうなるの?」
「・・・長老会議・・・」
ブハァーーーッ!
この人が横に居るといつもカウンターがビールだらけになります。
「ナニナニ!、長老会議って!?」
いつも通り、カウンターを拭きながらジャングル並みの会議名に私は笑いが止まりません。
「マタイがな、ぁ、長老のコトをマタイって言うんだけどね・・・」
ブハァーーーッ!
※以下、ブハァーーーッ!は私が吹き出している様子だとお考えになっていただいて結構です
「島じゅうのマタイたちが集まって、ヒトーシ(ザアさんのほぼ本名)と、彼女を結婚させるわけにはいかないって判断が出ちゃってサァ。。。」
どうやら、この島では親ではなく、部落の承認が必要だったようです。
「それでそれで?」
「彼女のオネェさんの提案で、マタイたちにカネを握らせようってことになって。。。」
「まさか。。。」
「約100万。。。」
ブハァーーーッ!
「ペソ?ウォン?キレイな穴の開いた石?」
「円。。。」
ブハァーーーッ!
「で、会議はひっくり返るって?」
「見事に。。。」
すでに、ザアさんは婚約後、日本に渡るまでの準備期間中の花嫁修行と称し、就学させ、多額の学費を援助しているにも関わらず、この期に及んで、長老会議。。。
島を挙げての「シマシマ詐欺」かも知れない予感を前提に、「次に行ったら、空港の滑走路が増えてたりして・・・」と一瞬アタマをよぎりますが、質問を切り替え、「やっぱ、そんな重大な会議の時とかはファイヤーダンスとかしちゃうの?」と聞けば、「火とかくぐっちゃう・・・」とウソかホントかわからない返答ぶりは、きっと「アノコ」のことで、いろんなアタマがふくらん・・・一杯なのでしょう。
常夏のマーメイドは、現在ある意味、部落による軟禁状態で、ビザも降りないそうです。来年とも再来年とも言われている結婚来日後、日本の冬の厳しい寒さにヘコタレて「電撃離婚」にならないように、「今年の冬の間に寒さを体感させる意味でも連れておいでよ」と言う私の優しいキモチに反し、国境をまたいで「恋の綱引き」は今も尚、進行形で、出国許可をする・しないでの駆け引きは継続中のようです。
ザアさんの入国を拒否しない理由は「ヨコシマ」な大人の事情が背景にあるにせよ、瓦職人がファイヤーダンスの国との外交問題の火付け役にならないことを願うばかりです。
63歳にしてサモアの少女との婚約にこぎつけたザアさんの手招きにより、コッチに座れと、婚約ができてしまうほどの得意のジェスチャーで呼んでいるようですが、浮かれたオヤジの話しを聞く気分でもなく、放っておくと、まもなくザアさんが移動してきて私の横に座りました。
いつもニコニコなのか、ニヤニヤなのか、それともヘラヘラなのか、笑顔の耐えない人で、瓦職人のクセに屋根から時々落ちるオチャメな人です。「いやぁ~スッゴイ強風でまた落ちちゃったよ」と、今日も落ちた話しから入ります。
「プロなんだから、落ちないショ。フツー」と言えば、「足腰が弱くなるほどプロを続けちゃったよ」と、会話に空白を作らない人でもあります。
ケガもなく、こうして呑んでいるのですからプロといえば、プロなのでしょう。
「どうスか?サモア、その後・・・」
短い単語で切り出すと、今夜はヤシガニの話しからスタートです。
「はるちゃん、ヤシガニパーティーなんだけどさぁ。。。そこら中にヤシガニは居るんだけど、現地のヤツらは食べないのよ。従って加工品もないわけで、空港でヤシガニがガサガサしちゃったら逮捕されるのかなぁ。。。ワシントン条約とかで。。。」
ザアさんは生身の少女を持ち出すつもりでいることが、既に逮捕なのに、ザリガニごときでビクビクしています。
「じゃぁ、塩ゆでかナンカにして持ってきて」
「ダメダメダメダメ!オレ、現地で目をつけられちゃッてるから、アイツらが食わないものを茹でたりしてるのを見つかったら、また大騒ぎだよ」
「ナニ、またって。。。」
国境をまたいでご迷惑をかけている予感を放っておくことはできず、私も重いコシを上げて、話しに乗ッかってみることにします。
「彼女は今は18歳だけど、知り合ったのは10年前。オレがはるちゃんチくらいの頃に8歳の子どもと南の楽園で会ったら、コッチもしかめっ面なんかしてないわけで、何度か旅行を繰り返すウチに、顔見知りのオッさんと島の子どもたちは『イェ~イ!』なんて、ハイタッチとかしちゃうわけよ。」
・・・どんだけ顔見知りになっちゃうんだ。。。
「こっちはさぁ、行く度に島の子どもたちがハイタッチしてくるから満面の笑顔でお応えしてきたわけよ。でもな、それが現地の大人たちの目には怪しいジャパニーズが、島の子どもたちをタブラかしてるんじゃないかってウワサになってたらしくて、彼女が結婚を決意した時、島が動いたのよ。」
・・・笑顔が罪になる人、初めて会いました。
「え?どうなるの?」
「・・・長老会議・・・」
ブハァーーーッ!
この人が横に居るといつもカウンターがビールだらけになります。
「ナニナニ!、長老会議って!?」
いつも通り、カウンターを拭きながらジャングル並みの会議名に私は笑いが止まりません。
「マタイがな、ぁ、長老のコトをマタイって言うんだけどね・・・」
ブハァーーーッ!
※以下、ブハァーーーッ!は私が吹き出している様子だとお考えになっていただいて結構です
「島じゅうのマタイたちが集まって、ヒトーシ(ザアさんのほぼ本名)と、彼女を結婚させるわけにはいかないって判断が出ちゃってサァ。。。」
どうやら、この島では親ではなく、部落の承認が必要だったようです。
「それでそれで?」
「彼女のオネェさんの提案で、マタイたちにカネを握らせようってことになって。。。」
「まさか。。。」
「約100万。。。」
ブハァーーーッ!
「ペソ?ウォン?キレイな穴の開いた石?」
「円。。。」
ブハァーーーッ!
「で、会議はひっくり返るって?」
「見事に。。。」
すでに、ザアさんは婚約後、日本に渡るまでの準備期間中の花嫁修行と称し、就学させ、多額の学費を援助しているにも関わらず、この期に及んで、長老会議。。。
島を挙げての「シマシマ詐欺」かも知れない予感を前提に、「次に行ったら、空港の滑走路が増えてたりして・・・」と一瞬アタマをよぎりますが、質問を切り替え、「やっぱ、そんな重大な会議の時とかはファイヤーダンスとかしちゃうの?」と聞けば、「火とかくぐっちゃう・・・」とウソかホントかわからない返答ぶりは、きっと「アノコ」のことで、いろんなアタマがふくらん・・・一杯なのでしょう。
常夏のマーメイドは、現在ある意味、部落による軟禁状態で、ビザも降りないそうです。来年とも再来年とも言われている結婚来日後、日本の冬の厳しい寒さにヘコタレて「電撃離婚」にならないように、「今年の冬の間に寒さを体感させる意味でも連れておいでよ」と言う私の優しいキモチに反し、国境をまたいで「恋の綱引き」は今も尚、進行形で、出国許可をする・しないでの駆け引きは継続中のようです。
ザアさんの入国を拒否しない理由は「ヨコシマ」な大人の事情が背景にあるにせよ、瓦職人がファイヤーダンスの国との外交問題の火付け役にならないことを願うばかりです。
Posted by Nori at 13:28│Comments(0)
│ゆかいな仲間たち